連日のスタジオワークから刺激を貰い続けている。前日は仲間との音出しを経て、近況をじっくり聞いてもらえる時間となった。我々は作り続けるしか道はないのだ。
ということで3月25日・26日は 平沢進 INTERACTIVE LIVE SHOW 2022『ZCON』へ。観客として拝見できるのは一昨年7月の無観客公演【会然TREK 2K20▼04 GHOST VENUE】以来。しかもDVDでしか経験のない初のインタラクティブ・ライヴだ。フロアとのやり取り(interactive) を経てストーリーと曲順が変化していくゲーム要素を孕んだ方式のライヴは四半世紀前から続けられている。
【現地レポート】〜平沢進+会人(EJIN)【会然TREK 2K20▼04 GHOST VENUE】〜 初めて平沢進を初めての無観客ライヴで見た!
オーディエンスは今回 “改訂評議会員” としてライヴに『参加』。MYST を彷彿とさせるCG世界をバックスクリーンに映し、一定回数現れる分岐点で拍手(本来は声援やボールの受け渡しによるアクションなど)の大きいルートに進んでいく。”ZCON” での内容を少し具体的に書くと、スクリーンに表示された文章を「どちらの選択肢に書き換えるか」というもので、原文の内容に対応する意味を持つ側を選ぶことができれば物語がいい方向に運ばれていく。しかしその『文章』が、非常に難解なのだ。
今回私は3公演全てに参加(2日目は昼夜の2回し!)することができたが、1回目では文字を追うのが精一杯で、見事に【最失敗ルート】に辿り着いた。情報と内容を少し把握した状態での2回目で【通常(?)ルート】となり、やや順番も覚えてきたような気がする3回目で遂に【成功ルート】へ到着。同じストーリーを反芻したからこそ(改訂評議会員皆さんで)最良ルートを選ぶことができたようなものだ。
ゲスト出演者にはお馴染みの “会人” お二人。加えてオリモマサミ、そしてナカムラルビイが参加。シトリンとルビイという姉妹役で映像出演するわけだが、ナカムラのアニオタPOWERが爆発したのかアフレコも見事にキャラ立ちしている。
とうとうステージに姉妹も揃っての “ASHURA CLOCK” は至高が過ぎる。(…そうか、私もこの曲順が “刺さる” ようになってきたのだな。)「さあ、ルビイ、やるんだ!」頭によぎった言葉が映し出され、テナーサクスフォーンからけたたましいノイズが空間を切り裂く。初日から徐々にノイズと色彩が調和していき、最終公演の『呼吸』は彼女がこれまで信じ積み上げてきた心情と鬱憤をぶちまけるかのような無敵の演奏であった。シビれた~。
ナカムラルビイ × #STDRUMS による地下倉庫累積実験。
L・R の2つの “選択肢” は、じっくりよく読めば『どちらに進むべきか』を理解できる可能性を孕んでいる。しかし抽象的かつ複雑な言葉を用いた文章が矢継ぎ早に流れると、2つ目の選択肢が流れたときには既に『質問内容そのもの』が頭から抜けてしまっていた。瞬時に選択を迫られる状況では「正しいことを言っているのはどちらか」ではなく、印象による判断となってしまうことが多い。
この「どちらを選んでいいかわからない」状況こそが、つまり今の世の中を揶揄しているのだと解釈している。あらゆる専門用語や形式的文言を使い「よくわからないけどLなのかな」と印象付けてコントロールされる民間。「あのときRにしておけばよかった」と振り返ったところで、多数決で動いた大きな流れの軌道修正をするのは難しい。
「書いてある文章をよく読みましょう」というメッセージは “平沢進” のtwitterアカウントからも常に発信されていると感じさせる理念だ。言葉数を敢えて増やしたかのような投稿たちは分岐点の設問文と気質が似ており、周囲を取り巻く各アカウントからは無数の憶測や深読みが発生している。よく読めばわかることでも、指で埃を掬うように印象だけを拾おうとしてる人々は決して少なくない。
「全て嘘っぱち」だとBEACONのギターソロをぶち込む “平沢進” の姿は「自分の意志でCALL!! せよ」と言っているように感じられた。繰り返すがこの日我々はオーディエンスではなく “改訂評議会員” の1人としてライヴに参加しているのである。”CALL!!” はアクションであり、流されてしまっては元も子もない。
最終公演ルートで、これまで『台詞』として音読されていた文章をバックに “LEAK” が演奏される演出にはやられた。初日だけでは気持ちにモヤモヤが残り、しかし最終日の成功ルートだけ観ても流れは把握し切れなかったであろう。一度だけでは辿り着けない「やり込みモード」をライヴに搭載しているのだから恐るべし…。
事実として、私は去年の8月に同じ苗場のステージへ立っている。概ねの構想がどれだけあったかは未知数であるものの、少なくともそこから僅か半年余りで多数の分岐を踏まえた脚本と展開を作り上げているスピードとクオリティーに感嘆せざるを得ない。こちとら1曲でさえヒィヒィ言いながら完成しないわけ。我々は作り続けるしか道はないのだ。素晴らしい公演をありがとう御座いました。
それでは、続きはwebで。チーン。
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