METAL TRASHING FIT II

by Yuji "Rerure" Kawaguchi #STDRUMS

#stdrums Daily

日常に音楽を取り戻そう【RICH FOREVER JAPAN TOUR 2023】声明

投稿日:2023年4月14日 更新日:

時は自身を変化させるかもしれないが、時を遡ることはできない。(Time may change me but I can’t trace time.)

大学新卒でのサラリーマン時代、池袋で終電を逃した。なぜこんな日々を過ごしているのか。如何ともしがたい負の感情に任せて途方もなく酒に酔い潰れていた。

拒絶する身体を起こし、自らの意志とは程遠い場所にあるスーツを着て、感情が全く読み取れない満員電車へ身体を押し込み時間を浪費していく。理由と動機を必要としない、ひとつの歯車であることのみを求められた環境に精神は限界を迎えていた。

曖昧な記憶のなか漫画喫茶に泊まって翌朝、迎えた朝日と共に Changes を聴いた。SONY製のポータブルCDプレイヤーを使っていた。ディスクを読み込ませてイヤホンを耳に挿したその瞬間、目の前に映っていたビル群が鮮やかな色彩を放ち始めた。漆黒に潰れていた心のなかに空洞のようななにかが芽生え始め、蕾は青々しくグラデーション状に伸びていく。変容を感じた確かな瞬間だった。

2023年4月12日。私は池袋の映画館へ足を運んでいた。最新のサラウンドシステムを搭載したホールだという噂を耳にし、多岐に渡るタスクを積み上げたまま暫しの息抜き。過去の映像と禅問答のようなインタビューを寄せ集めたスクリーンに集中力を高めた2時間を経てエンドロールを迎えたそのとき、流れ始めたのは Changes だった。

「変わるんだ。」
星になった男が紡いだ言葉は1971年から現代へと投げられた神託の如く、記憶のフラッシュバックと共に身体へ浸透していった。

ロンドンで活動する ZURITO との日本ツアーが、3年越しにいよいよ始まろうとしている。渡航制限もほぼ撤廃され、キャンセルとなった航空券のバウチャーを使ってこの時期日本へ来るのは彼らだけではないのだろう。

東京2カ所を皮切りに福岡・北海道。その後九州から車で東を目指し、中部・四国・北陸・関西を経て多治見・最後に東京は新宿LOFTにて自主企画の開催。

やっとだ。海外への渡航こそ断念したが、渦中も緊急事態宣言中も一度も止めずにツアーをし続けてきた。無意味な制限もようやく解除され、なんとか自分のやりたいことがやれる状況にまでなってきた。

改めて ZURITO を紹介したい。
ロンドンと #STDRUMS を繋げる最重要人物であるスペイン人ギタリスト、Javi Pérez (カタカナにすれば「ハビ」が一番発音に近い)。彼とは2014年に Brixton の路上で遭遇。ストリートでのセッションを重ね、彼らと “UNDERGROOVELAND” (以下UGL) を結成。

#STDRUMS 帰国後もドラマーが加入して UGL は継続。2016年は車1台でのヨーロッパ横断ツアー、そして2017年には日本ツアー “RICH FOREVER JAPAN TOUR 2017” を敢行。このときの企画が今日の “RICH FOREVER SEMINAR” へと繋がっている。

のちに UGL は解体。ジャズバンド “CYKADA” を結成し、精力的な活動で人気を博す一方で「自分の中心となる活動をしたい」と言っていた彼は “ZURITO” を立ち上げる。リズムギターの Tere と2人を中心に演奏メンバーは固定せず変容的に活動。2020年に 1st Album “Tamesis” を持って日本ツアーを計画していた。

(Javi との出会いについて詳しくはこのときのブログをどうぞ。
https://www.rerure.com/blog2/archives/7298)

こうして3年間の停滞を経て、2nd Album “Amor De Tres” を引っ提げての日本ツアーが “RICH FOREVER JAPAN TOUR 2023” である。ツアーに向けてスペシャルジャパンエディションのCDを用意してきたとのこと。現在バンドは6人編成だが、今回は中心人物の Javi, Tere 2人組での来日。

完全DIYでの無謀なツアーをする理由はただ1つ。彼らのライヴ・音楽を聴いてほしいからだ。フラメンコ・カリプソといったスペインの伝統的サウンド(いわゆるレアグルーヴ)の異国情緒とロック・スピリッツが融合し、2023年へとアップデートされたU.K.最前線の音楽。

そして何より、ど肝を抜かされるプレイ…これまでSNSなどでも触れてきたが、ここ日本ではまず耳にすることが出来ない『土俵が違う』演奏レベル。ただでさえ音源が新しいのに、ライヴでは更に『規格外のギター』が聴ける。良し悪しの話しではなく、優劣の判断が効かなくなるほど『規格外』なのだ。

そして彼らのような音楽と演奏が、ロンドンの日常には溢れている。意図的に小規模の会場やバーを選んで周れるのはDIYツアーならでは。街角の一部を切り取って日本へ持ち込んだかのような疑似体験をお楽しみいただけます。

国籍・年齢に関係なく、平等だからこそ、音楽は面白い。世界を見渡せばまだまだ知らない音楽があり、感じたこともないノリ・言語・リズム・展開が『音楽』という共通言語を通じて分かち合える。「出会ったことのないホンモノの音楽に触れてほしい」とは6年前の “RICH FOREVER JAPAN TOUR 2017” から続くテーマである。

まだ見ぬ新しいものに触れることとは、人間が持つ好奇心の1つだ。しかし無数の情報が飽和する現代。特に昨今は真偽の判断も追いつかないまま暗いニュースが重なり、心の余裕を持つのは特に難しい。しかしその余裕とは、現代に於いて意識的に作ろうとしなければ生まれないのも事実。

世情のインバウンドも影響し、乱立と言えるくらいに来日情報は激増している。それだけ世の中の活力が湧き始めてきたのはとても喜ばしいことだ。では、ようやく「日常が戻ってきた」のか?

1つ言いたいことがある。
日常はなにも「戻ってきていない。」

この3年間で多くのアーティストが音楽活動から離れざるを得なくなった。病気や亡くなってしまった仲間や知り合い。一度遠ざかってしまったオーディエンスは戻ってこず、会場とスタジオは規模の縮小・閉店を余儀なくされ、現在は人が集まる場所への制限が撤廃されただけの、更地のような状態である。

日常とは戻ってくるものではなく、常に日々変化するもの。毎日の習慣でさえも気付けばグラデーション状に変化し、【日常】としてのライヴハウスは人々の遠い記憶となってしまったように感じる。

仕事終わりにダッシュでライヴハウスへ駆け込みスタートギリギリに間に合ったあの日。
周囲や人気に左右されず、自分で選んだ特別な1日。
ステージでの表現を感じ取りながら自由に過ごす仲間たちとの時間。
こうした前向きな姿勢と行動があってこそ、芸術・エンターテイメントは育まれてきた。

「おもちゃが売れるということは世界が平和な証拠。おもちゃの発展は世界平和をもたらすのです」とある玩具メーカーが話していたこの言葉を覚えている。身体中に張り巡らされた血管が凝り固まれば自由が効かなくなってしまうように、日常が制限され娯楽が停滞すれば世の中は生気を失ってしまう。

昨年リリースした JUST A PHENOMENON ライナーノーツから抜粋。
いかなる状況にあろうとも、私がこの3年間でイベントとツアーを止めなかった理由です。
しかし本当に音楽を日常へ取り戻すには、演者側だけの働きかけでは届かない。

お願いがあります。
目まぐるしい日々が続く大変な時代ですが、どうかライヴハウスへ足を運んでください。
素晴らしい世界は、素晴らしい人々によって作られる。
あなたの一歩が確実に世の中をポジティヴに彩ります。
その先が我々のツアーでしたら、最高の音楽体験をお約束します。

「変わるんだ。」
今回のツアーが、あなたにとって素晴らしい【変化】となりますように。

ZURITO (UK)
#STDRUMS (TOKYO)
RICH FOREVER JAPAN TOUR 2023


4月14日(金) 新宿 ROCK INN DICE
4月15日(土) 高円寺 SHOWBOAT
4月20日(木) 福岡 como es
4月22日(土) 札幌 REVOLVER
4月23日(日) 旭川 MOSQUITO
4月28日(金) 福岡 UTERO
4月30日(日) 岡山 PEPPERLAND
5月1日(月) 香川 TOONICE
5月3日(水祝) 高知 CHAOTIC NOISE
5月5 日(金祝) 福井 NoSiDE
5月7日(日) 大阪 火影
5月8日(月) 京都 RAG
5月13日(土) 岐阜 多治見市役所 駅北庁舎

TOUR FINAL
5月31日(水) 新宿 LOFT
RICH FOREVER SEMINAR vol.10
予約(デジタル入場券)はコチラ

それでは、続きはwebで。チーン。

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