St.Michael and all angels Churchからタクシー会社へ電話を掛ける。
これまでボディーランゲージもあって
英語でのコミュニケーションが取れていたが、
電話、ましてや西部訛りの英語相手だ。
最も実力が試されるときが来ていた。
繋がると開口一番
"Hello, are you YUJI?"
おま
確かに、行きのタクシー内で僕の名前を事務所に伝えてくれていた。
恐らくこの近くで電話を掛けるなんてのは僕くらいだったのだろう。
それにしても、それにしても。
10分で到着すると伝えられ、30分後に迎えてくれたタクシーに乗る。
運転手さんに"are you enjoy?"と訊かれたのが印象的だった。
彼はなんとJasonをタクシーに乗せたことがあるらしい。
しかも少し寄り道をしてくれて、
当時メンバーがよく通っていたといわれるパブの前を通ってくれた。
今すぐ飛び降りてGUINNESSを堪能するべきだったか。
行き帰りは別の運転手さんだったのだけど、
2人とも"Hats off to Led Zeppelin"の話をしてくれた。
オフィシャルのZEPトリビュートバンドらしい。
カバーバンドでそれだけ知名度があるのも流石である。
Droitwich Spa駅へ戻ってきた。
運転手さんに強い感謝を伝えてお別れする。
電車を待っていると、あれだけずぶ濡れになった服がもう乾いていた。
素晴らしき乾燥気候。
住民が傘を差さないのはすぐ乾くからなんだね。
暫く待った電車に乗りBirminghamへ戻ってきた。
ボンゾの墓へ行ったことにようやく現実味が出てきて、
この経験を誰かに伝えたいという気持ちが沸々と現れる。
そのタイミングで発見したThe Sunflower Loungeというパブ。
今日はライヴもやっているらしい。
生音が漏れる店内へ突撃。
常連とバンド関係のお客で賑わい、訛り英語が喧騒のように飛び交う。
Norwood Junctionのパブで感じた度・アウェイの空気だ。
ようやく一息つける安堵感と緊張感が入り混じる。
日本人が1人で飲んでいるのは珍しくみえるのか、
何人かが話しかけてくれたので、
ここぞとばかりに今日の奇跡を伝えようとすると、
意外にも反応は薄い。
おい!ここはバーミンガムだろ!
そして音楽をやるやつらが少なくとも集まっているんだろ!
もっとあるだろ!グレイト!とか、クール!とか。
いや、ここら辺は言ってくれたな…。
伝説ではあっても今を生きているバンドではない。
地元の反応とはそれくらいのものなのかもしれない。
シェアハウスのメンバーが集まると連絡もあったので、
店を出ることにした。
もう気持ちは落ち着いたし、充分堪能できた。
ロンドンに戻ってたっぷり話を聞いてもらおうと企んでいた。
まだ明るい外に出ると、ベンチで数人が話をしていた。
見るとバンドマンの風貌で(店の写真に写っているヤツら)
この人たちなら話を解ってくれるかもしれない。
最後に自慢話を聞いて貰って帰ろう。
こうして突然の挨拶から知り合うことになったPaul, David, Andy.
彼らは今日出演するDark Actorsのメンバーだった。
この後ライヴを見ていかないかと尋ねられたので即前言撤回。
ボンゾの話をすると、今までとは違う喜ばしい反応をくれた。
メンバーの1人が(確かPaul)Robert Plantと遠い親戚らしい。
段々馴染ませてもらえて、ちぐはぐで何度も聴き直して、
なんとか会話を成立させる。
SABBATH, THE MOVE, MOODY BLUESなど
Birmingham出身バンドの話で盛り上がる。
Duran Duranには、ちょっと嫌な顔をしていた笑。
こうして出演の時間になりライヴのスペースへ。
入場は3£。気楽に入れます。
Dark Actorsはトラディショナルなブリティッシュロック!
Duran Duranに微妙な反応を示す理由もうなずける。
ボンゾを切っ掛けに知り合えた仲間の演奏は
最高なひと時を届けてくれた。
終わった後も皆で飲む。
彼らの友達Siobhanはアイルランド出身らしい。
彼女はとても親切で、わからない言葉も
なんとか噛み砕いて伝えてくれた。
帰りに乗る電車が同じものだったらしく、
Dark Actorsご一行と駅へ向かう。
これで帰り道も安心だ…!
あれ、
皆さん、
随分手前のCoventryで降りちゃうの?
皆、今日は本当にありがとう!
突然過ぎて気持ちが入りきらないまま再会を誓う。
がっつり飲んだ状態での深夜のイギリス旅行。
この道中、どうなることやら…。
この旅のスタート地点、LONDONはEustonへ到着すると、
そこから先の電車は全て終了していた。
時間は24時頃。
そりゃ、そうか。
タクシーを案内されたが、流石に高額になり過ぎる。
何とかHAMMERSMITHまで向かう深夜バスに乗ることができた。
CODAを聴いて今日を回想しながら、
深夜の街をダブルデッカーでゆっくりと進む。
1時間ほどで到着して、ここから数多ある行き先のバスの中から、
ACTON TOWNへ向かうバスを探す。
携帯電話の電池はもう切れてしまい、
地図を見ながら歩くという選択肢は無くなってしまった。
右往左往していると、同じ行き先へ向かう旅行者がいたので、
彼と手分けして、30分後くらいになんとか目的地へ向かうバスを発見。
これで、帰れる!
暫くバスに揺られていると、見慣れた街が見えてきた。
駅前で降りて、彼と握手をして別れた。
ちゃんと、戻ってこれた。
時間は深夜3時頃。
天気はすっかり回復し、大きな月が顔を見せていた。
こうして長い長い1日が終わった。
一緒に居てくれたPaul, David, Andy, Nick, Siobhan.
そして僕とバーミンガムを繋げてくれたJohn Bonham.
本当にありがとう。
開かれたらしいピザパーティーの余りものを温めて食べながら、
またもう一度、LED ZEPPELINを聴き入るのでした。